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日本で生まれたオーストラリア国籍の子供の出生届は? ― 出生によるオーストラリア国籍の登録について

更新日:3 日前



当会の会員の間で「オーストラリア国外で生まれた赤ちゃんの出生届」についてテーマになりました。両親の片方がオーストラリア国籍なので届け出たいが、日本で届ける場合はとても心配!というご相談があり、多くの同様な意見が寄せられました。

なぜかというと、日本の国籍法では「自己の志望により外国籍を取得すると日本国籍を失う」とされているからです。出生届けを出したら、その行為が外国籍取得にあたると判断されるのではないか、という心配です。


子供が生まれると、その事実を知らせるために役所に出生届を提出します。これでその国にそういう国民がいるという事実が登録されます。

国際結婚で両親から出生による異なった国籍を継承する場合は、その両方の国に届け出て初めてそれぞれの国民として把握されます。

国によってこの出生届の手続きとして「登録」とか「申請」などを意味する言葉が使われますが、これを日本の法務局が「日本国籍取得後の申請による取得」と解釈するのか「血統による当然取得」と解釈するのかは日本側の判断に委ねられます。

 

しかし法務省に解釈を尋ねても、普通に質問しただけでは当たり障りのない回答しか返してくれません。かなり食い下がって質問した結果、東京法務局国籍課から下記のようなお返事をいただいたので、以下にご報告します。


また、その後2023年6月号の戸籍時報に、オーストラリア国籍の申請についての記事があり、その中での説明内容は、当会がもらったメールとは違う解釈でした。やはり出生による自動的取得には当たらず基本的には日本の11条1項が適用されるが、日本の民法による未成年の外国籍取得には親権者である両親双方の同意が必要であるとされるところ、オーストラリア市民権の申請は片方の親のみで可能であるので日本の民法の規定にあたらず、結果的には日本国籍を失っておらず複数国籍になれるという回答でした。

個別に法務局に質問しても確かな回答を得られるわけではないことを痛感しましたが、これを教訓に、当会でもなるべく多くの資料を皆様と共有していきたいと考えています。


当事者の方たちは本当にご心配だと思いますので、この記事を関係するみなさまに拡散してくださるようにご協力をお願いします。



 

戸籍時報2023年6月号 No.840 P62~64

 

国籍相談 法務省民事局民事第一課職員

 

No.471

日本人妻とオーストラリア人夫の嫡出子として日本において出生した子につき血統によるオーストラリア市民権の申請を行った場合における日本国籍の有無について

 

 私は、オーストラリア人の夫と、 夫との間に生まれた息子がいる日本人女性です。

 夫とは2020年3 月30日に婚姻し、 2021年4 月23日に日本で息子が生まれ、 市役所に出生の届出をしました。 その後、 夫がインターネットで手続を行い、 息子は2022年9 月28日に血統によるオーストラリア市民権を取得しました。 なお、 私はこの手続に関与していません ( インターネットの入力フォーマットを提示してもらった。) 。

 この度、 息子の日本国パスポートを取得するため、 パスポートセンターへ行ったところ、息子はオーストラリア市民権を取得したことにより、 日本国籍を喪失している可能性があると指摘されました。

 息子は、 血統によるオーストラリア市民権を取得したため、 日本国籍とオーストラリア国籍を持つ重国籍者であると思っていましたが、 日本国籍を喪失しているのでしょうか。

 

1 はじめに、 日本国籍を喪失する場合について説明します。

 国籍法第11条第 1 項 (注 1 ) に、 「日本国民は、 自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、 日本の国籍を失う」 と規定されています。 「自己の志望」 による外国の国籍の取得とは、 帰化、 国籍の回復、 国籍取得の届出その他名称のいかんにかかわらず、 外国国籍の取得を希望する意思表示の直接の効果として、 外国国籍が付与されることを意味しているとされています。

 これに対して、 婚姻、認知、 養子緑組等の外国人との身分行為に伴う当然の効果として外国国籍が付与される場合には、「自己の志望」による外国国籍の取得には当たらず、日本国籍を喪失することはありません。

 

2 次に、あなたの息子さんの国籍について考えてみましょう。

 息子さんは日本人のあなたとオーストラリア人夫の嫡出子として、日本で出生していることから、 出生によって日本国籍を取得しています (国箱法第2条第1号) (注 1 )。

 また、 オーストラリアの国籍制度は、 父母両系血統主義であり、 オーストラリア市民権法第12条 (注2) で、 オーストラリア国内で出生した子の市民権の取得について、 同法第16条 (注2) で、 オーストラリア国外で出生した子の市民権の取得について規定しています。 オーストラリア国外で出生した子は、 両親の一方がオーストラリア市民権を有していても、 自動的に血統によるオーストラリア市民権を取得できず、 オーストラリア市民権を取得するためには申請を行う必要があります。

 息子さんは、 日本で生まれているため、 生まれた時点ではオーストラリア市民権を取得しておらず、 あなたの夫がオーストラリア市民権法第16条による手続を行ったことにより、 オーストラリア市民権を取得しています。

 オーストラリア市民権法第16条による市民権の取得は、 申請によって行われ、また、 登録をした日からオーストラリア市民であるとみなされることとなるので、 一般的には国籍法第11条第1項に規定する自己の志望による外国国籍の取得に該当するものと考えられます。

 しかし、 本申請時に息子さんは未成年であったところ、 未成年者の外国国籍の取得が国籍法第11条第1 項に規定する自己の志望による外国国籍の取得に該当するためには、 適法な法定代理人によってその手続が行われていることが必要とされています。

 本申請時の息子さんの法定代理人は父母双方となりますが (民法第818条、 法の適用に関する通則法第32条)、 16歳未満の者がオーストラリア市民権の取得を申請するに当たり、 形式上は、 必ずしも他方の親の同意が要件とされていないこと、 あなたに提示していただいたインターネットの入力フォーマットを確認したところ、 「責任ある親」 の一人が同意するフォーマットになっており、 夫が単独でインターネットにより本申請を行っていることから、今般のオーストラリア市民権の取得は、 国籍法第11条第 1項の自己の志望による外国国緒の取得には当たらず、 息子さんは日本国籍を喪失していません。

 よって、 息子さんは日本とオーストラリアの重国籍者となりますので、 法定の期限までに国籍選択の届出をしていただく必要があります (国籍法第14条第1項) (注1 )。

 

(注1)国籍法(昭和25年法律第147号)

第2条 子は、次の場合には、日本国民とする。

 一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。

 二・三 (略)

第11条 日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

 ② (略)

第14条 外国の国籍を有する日本国民は、 外国及び日本の国籍を有することとなつた時が十八歳に達する以前であるときは二十歳に達するまでに、その時が十八歳に達したあとであるときはそのときから二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

 ② (略)

 

(注2) 2007年オーストラリア市民権法

第12条 (出生による市民権)

 (1) オーストラリアで出生した者は、 以下の場合に、 オーストラリア市民となる。

  (a) その者の出生の時に、 一方の親がオーストラリア市民であるか、 又は永住者      である場合、 又は、

  (b)その者の出生の日から10年問継続してオーストラリアに常居している場合

 (2) (略)

第16条 市民権の申請及び適格性

(1)大臣に対し、オーストラリア市民になる申請をすることができる。

   1949年1月26日以降にオーストラリア国外で出生した者

  (2)オーストラリア国外で、 1949年 1 月26日以降に出生した者は、 以下の場合に     オーストラリア市民となる資格を有する。

   (a) 出生の時に、親の一方がオーストラリア市民であり、

   (b) 出生の時に、親が本サブディビジョン又はサブディビジョンAA又は第10B 条、第  10C条、第11条に基づくオーストラリア市民であり、

    (i) 親が申請前に通算して、少なくとも2年間(非合法の非市民である場合を        除き)オーストラリアにいるか、又は、

    (ii)その者が申請時に他国の国民又は市民ではなく、過去にその国の国民又は市 民ではなかったとき、

   (c) 他国の国民又は市民であるとき 、 又は、 無国籍条約 (The Stateless Persons Convention) 第1条第2項(iii) の規定が適用され、その者が18        歳以上であるときは、大臣が申請に関する決定の時に、その者が善良であ        ると判断したとき

1949年 1 月26日前にオーストラリア国外又はニューギニアで出生した者

  (3)(略)⑴

 

東京法務局国籍課へのメールによる質問と回答

 

タイトル:オーストラリア旅券申請の日本国籍への影響について

 

質問: 2022年9月

 

日本人母とオーストラリア人父のもとに日本で生まれた子どもが、オーストラリア旅券の申請のために、在日オーストラリア大使館にて国籍登録をすると、日本の国籍法11条1項にあたるのでしょうか。

以前、日本とロシアの両親から生まれた子どもが11条1項により日本国籍を喪失したという事例を聞きました。

オーストラリアの国籍法の場合はどのように判断されるのか教えていただければ幸甚です。

 

回答: 2022年9月1日

 

東京法務局国籍課でございます。

  お問い合わせいただきました事項についてお答えいたします。

 

 御相談のあった方について、出生により日本国籍とともにオーストラリア国籍を取得された場合には、オーストラリア旅券の取得は事後的な外国国籍の取得にあたらず、日本国籍は喪失しないと思われます。しかしながら、出生時点で日本国籍のみを取得し、オーストラリア旅券取得のためオーストラリア国籍を取得された場合には、国籍法第11条の規定により日本国籍を喪失することとなります。

  オーストラリア国籍の有無及び取得原因については、オーストラリア大使館またはオーストラリア政府にご確認ください。

 

  なお、御指摘のあったロシアに関して、ロシア連邦国外で出生した婚姻状態にある日本人とロシア人父母間の子は、ロシアの国籍法制度上、出生によりロシア国籍を自動的に取得しないと把握しております。したがって、日本国籍のみの子について、ロシア旅券取得手続に伴い事後的にロシア国籍を取得した場合には、国籍法第11条の規定により日本国籍を喪失することとなります。

以上

 

 

質問:2022年9月5日

 

担当者様、ご回答をありがとうございます。

在日オーストラリア大使館のホームページには


https://japan.embassy.gov.au/tkyojapanese/citizenship.html日本における重国籍: 日本は特定の状況において重国籍を認めています。 重国籍および日本国籍の喪失に関する日本の法律については、オーストラリア国籍登録の申請を行う前に法務省へお問い合わせください。内務省は、二重/重国籍に関する他国の法律について助言致しかねます。

という記述があります。

当事者は母が日本人で、出生の際、母親の戸籍に出生届を出し記載されています。父親がオーストラリア国籍なので、下記のように血統により出生時にオーストラリア国籍も取得していると思いますが、旅券を申請するにはまずは国籍証明書を申請して取得しなければならないとあります。これを単なるオーストラリアへの出生届であるとそちらで解釈されるのかどうかを是非教えていただきたく存じます。


オーストラリア大使館の「Citizenship by descent」という表現を日本の法務省が「血統による出生時の国籍当然取得」と解釈するのか、


いいえ。まずオーストラリア国籍を申請し、国籍証明書を取得しなければなりません。

という表現を、日本の法務省が日本の国籍法11条1項に適用されるのかされないのか判断され、すでに運用されていることと拝察いたします。日本国内で日本人の親から生まれ日本で育っている子供から、11条1項をもとに突然日本国籍が奪われることになるのは、子供の人権にも関わってくる切実な問題という認識です。どうか、そちらの法務局で運用されている規定をご教示くださいますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。



回答:2022年10月17日


東京法務局国籍課でございます。

  お問い合わせいただきました事項についてお答えいたします。

  回答に時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした。


 御相談のあった、血統による日本国籍とオーストラリア国籍をお持ちの方が、オーストラリア旅券を申請するために国籍証明書を取得した場合でも、自己の志望による外国籍の取得にはあたらないため、単なるオーストラリアへの出生届であるという解釈になります。

以上



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