この報告は、国籍選択届を提出しているか否かで日本旅券の申請に違いがあるかど うかについて、2011 年に当会に相談があった内容を、
一つは衆議院議員事務所を通 じて外務省に照会した時の回答、
もう一つは外務省のホームページからメールで質 問したものの回答で、
会報 2011 年 12 月・2012 年 1 月合併号(第 338 号)と 2016 年 6・7 月号(第 366 号)に掲載されたものからの抜粋を構成したものです。
会報記事 <日本国籍法の解釈と、出生による重国籍者の在外公館での対応の仕方>から
国籍法では<出生地主義の国で生まれ重国籍になった者>、<出生により両親の国 籍を受け継ぎ重国籍となった者>は、日本の法務省も外務省も、日本国籍保持者と して旅券の発行や、それに伴う戸籍関係の書類の処理も、まったくの日本人として 取り扱うことになっていて、在外公館の申請窓口で拒否するということはあっては ならないことです。また、22 歳までに国籍選択届けを出していない人は選択義務は その後もずっと続くのですが、その状態でも、法務省も外務省も正式な日本国民と判断し、書類手続きをしなければならないことになっています。このように明確に発言できる根拠は、以前 「国際結婚を考える会」 がそのような文書を外務省からもらっているからです。
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議員事務所を通しての回答
質問: 某在外日本公館で、出生による重国籍者がパスポートの申請をしようとし たところ、国籍選択届けの未提出を理由に申請を受理してもらえなかったという報 告がありました。この対応は正しいのでしょうか。
回答: 国籍選択届未提出を理由に旅券申請受理を拒否することはありません。 旅券手続き上、法務省からの指示の有無に関係なく「国籍留保者」と「国籍保持者」は同様に扱っており、日本国籍を保持している限り旅券の申請を受していま す。出生等により重国籍になった方からの旅券申請は戸籍・国籍事務である国籍選択とは別の話でありますので、日本国籍を喪失していない限り申請を受理するよう 常日頃より指導しております。しかしながら、在外公館においては旅券事務を行っ ている領事担当官は旅券業務以外にも多様な領事事務に携わっており、当然、戸籍・国籍事務も行っております。このため旅券手続き等のために在外公館の領事窓口を訪れた関係者の方で、国籍選択をされていない方に対しましては、国籍選択の 必要性を説明しております。説明の際に相手の方に誤解を与えるような説明をした可能性が全くないとは言い切れません。仮に、誤解を与えるような説明又は間違っ た説明を行った担当官がいる場合は当方より厳しく指導しますので、具体的な申請窓口をご教示願えれば幸いです。(部分抜粋) (2011 年 10 月 20 日 外務省領事局旅券課)
外務省ホームページからの回答
外務省への質問 :
海外で出生届とともに留保届けを提出し日本国籍を取得した人が、日本パスポートの更新、新規発行を申請したとき、在外公館で選択届け未提出を理由に申請の受付を拒否することはできるのでしょうか? また、パスポートの更新や発給の手続きについて、各国の在外日本公館によって、 又はそのときに対応する窓口の人によって対応がかなり違うのはどのような理由によるものでしょうか。 (2011 年 10 月)
外務省からの回答 :
1 ご質問1について
(1) 国籍選択届未提出を理由に旅券申請受理を拒否することはありませ ん。
(2) 国籍選択届を日本に提出することにより相手国に通報する制度について、外務省では承知しておりません。
(3) 旅券手続上、法務省からの支持の有無に関係なく「国籍留保者」と 「国籍保持者」は同様に扱っており、日本国籍を保持している限り旅券の申請を受理しています。
(4) 本件(国籍留保者からの旅券申請に際し国籍選択を条件にする)に係る旅券の運用文書はありません。
(5) 今後の改善策等
出生等により重国籍になった方からの旅券申請は戸籍・国籍事務である国籍選択とは別の話でありますので、日本国籍を喪失していない限り申請を受理するよう常日頃より指導しております。 しかしながら、在外公館においては旅券事務を行っている領事担当官は旅券業務以外にも多様な領事事務に携わっており、当然、戸籍・国籍事務も行っております。このため旅券手続等のために在外公館の領事窓口を訪れた関係者の方で、国籍選択をされていない方に対しましては、国籍選択の必要性を説明しております。説明の際に相手の方に誤解を与えるような説明をした可能性が全くないとは言い切れません。 仮に、誤解を与えるような説明又は間違った説明を行った担当官等がいる場合は当方より厳しく指導しますので、具体的な申請窓口等をご教示願えれば幸いです。
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国籍留保者と国籍保持者を同等に扱う、ということは、旅券申請の受付だけでなく、出生届などの戸籍の処理の受付も、正規の日本国籍保持者として同等に扱うという ことです。そして、これに反するような公務を行う係官には<厳しく指導する>と言ってもらっています。
日本国内や在外公館の職員がすべて正しい知識のもとに職務遂行しているとは限りませんので、重国籍者またはその家族として当事者の私たち自身が正しい国籍法の理解をし、冷静に対処できるということが、自分たちの立場を守ることにつながります。在外公館の職員は、法律で決まっているので<選択届を出してくださいね> と言うのは職務ですが、これは強制はできないものです。旅券申請や書類の届出の際、「国籍選択届を提出してくださいね。」と言われたら、ことを複雑にしないように受け答えを心掛け、もしそれ以上に強制されたり、不快な対応をされた場合はしっかりと反論できるようにしておけば、<出生による重国籍者>は国内はもとより、在外公館での手続きでも日本国民としての権利を守られている、と考えていいと思います。もちろん、もう一つの国籍国のほうの国籍法で日本で国籍選択しても 影響がないことがわかっていれば、嫌な思いをしないために国籍選択届けを提出し てしまうことも選択肢の一つです。今後も<出生による重国籍者>が困った事例に遭遇した場合はぜひ会のほうにお知らせください。そのことが起こった日時と場所 (できれば係官の名前)がわかっていれば、具体例として外務省に報告して改善指導してもらうことができます。
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