日本人の外国籍取得に関するアンケート 調査結果
更新日:2022年2月10日
コロナ禍が始まって以来、逝去されたご家族のもとに戻ることができなかったり、介護のための帰国ができない海外邦人の方の嘆きを何度も聞いてきました。また、国籍法のために不安定な生活を強いられている方も数多くいることも把握しておりました。そういった海外在住の皆様の現状を伝えたいという思いから、この春、アンケート調査を実施し、多くの方にご協力いただいた結果、1800名余りの方々からご回答を頂きました。国際結婚を考える会の皆様には、お知り合いの方々にこのアンケート回答をご依頼頂き、多数の海外在住の方々から回答を頂くことができました。心からお礼申し上げます。この記事により、回答結果を皆様と共有したいと思います。
回答から、国籍法11条1項のために苦労されているだけでなく、お子さんの国籍についても懸念されている方、出生時から重国籍を持つお子さんが、22歳になった時点で国籍選択宣言をし、どちらかの国籍を放棄する必要があると誤解している方が多いことが分かりました。日本国籍を選択した場合、もう一つの外国籍の放棄は努力義務であり(日本国籍法第16条)、重国籍のままでいても法律違反にはなりません。現在、合法的に重国籍を持つ日本人は100万人ほど存在すると推測されています。
国籍法11条1項と14条について、ここで再び「おさらい」させて下さい。
11条1項:日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う
14条:外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない
11条1項は外国籍を取得した日本人の日本国籍を自動喪失させる法律で、この条項が適用される人は重国籍になることはありません。14条前半は未成年の時に当然重国籍になった人、後半は成人になった後に婚姻など本人の意志に関係なく外国籍を付与され重国籍になった人や、帰化などで日本の国籍を取得した後も引き続き従前の外国の国籍を保有している人が対象です。前述の通り、誤解を招く条文ではあるものの、日本国籍選択により外国籍を放棄「させる」法律ではありません。また、国籍選択宣言をしないまま二重国籍を維持している日本人も数多くいます。
以下、アンケートの結果について書かせて頂きます。
表1 回答者の居住国
回答者の居住国 回答者数 %
USA 492 26.2%
ドイツ 259 13.8%
フランス 227 12.2%
オーストラリア 179 9.5%
イギリス 146 7.8%
台湾 75 4%
その他 474 25.2%
合計 1852
回答者の居住国は広範囲に渡っており、「その他」の居住国はカナダ、フィンランド、イタリア、スペインなど、ヨーロッパ、アジア、中東やアフリカなど多くの国の方からも回答を頂きました。回答者の約9割は女性で、30代〜50代、居住年数10年〜30年の回答者が中心でした。
表2 回答者の年代
回答者の年代 回答者数 %
20代 125 6.7%
30代 423 22.6%
40代 674 35.9%
50代 398 21.2%
60代 193 10.3%
70代 54 2.9%
80歳以上 8 0.4%
表3 居住国での居住年数
回答者の居住年数 回答者数 %
5年未満 324 17.3%
5年〜10年 348 18.6%
10年〜20年 522 27.8%
20年〜30年 421 22.5%
30年以上 247 13.2%
40年以上 2
50年以上 8
表4 国籍法11条1項について
国籍法11条1項を知っていた 88%
知らなかった 12%
表5 居住国の国籍の有無
居住国の国籍を持っていない 90%
居住国の国籍を持っている 10%
居住国在住の理由として(複数回答可)最も多かったのは、ご家族の関係(約80%)でした。仕事が理由という回答、家族と仕事両方という回答も見られました。また、日本が住みづらい、東日本大震災の原発事故のため子供を育てるのに適していない、同性婚が認められていない日本では結婚できないため、といった回答もありました。
表5の通り、居住国の国籍を持っていない回答者は約90%で、そのうち約80%が、居住国の国籍を取得しない理由として、国籍法11条1項により日本国籍を喪失してしまうからと答えていました。
表6 日本国籍を喪失したくない主な理由(複数回答可)
将来事情が変わった場合日本に帰国して住みたい。 78%
日本国籍は日本人のアイデンティティーである。 63%
居住国と日本双方の国籍を持つ子どもの親として日本国籍を喪失したくない。 49%
戸籍から自分の名が消されることに抵抗がある。 35%
コロナ禍で、日本国籍がないと帰国が困難になる。 29.8%
表7 居住国の国籍を持たないために起こる主な問題(複数回答可)
利便性の欠如(例:ビザの更新、職業上の制限など) 73%
市民権なし(例:選挙権などがないこと) 62%
身分保全上の問題(例:長期出国により永住権の維持が困難になる不安) 59%
家族統