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「重国籍の子どもたちのための国籍法勉強会」 参加の皆さまへ

更新日:2021年1月21日

2017年7月9日に開催された東日本定例会の企画「重国籍の子供たちのための国籍法勉強会」で配付されたもりきかずみさんのテキストです。



2017 年7 月9 日 AMF 東日本7 月定例会

もりきかずみ


みなさま、こんにちは。西日本会員のもりきかずみです。今日の勉強会は、昨年11 月、京都で行った国籍法勉強会に引き続き、当会にとってとても重要なテーマです。当会創始者の一人で、1984 年国籍法改正運動に関わった者として、私は、娘や孫の世代が安心して両親の二つの国籍を維持していってほしいと思っています。

定例会はそのための勉強会になると思いますが、二つの国籍を持つ意味とは何か、またそれらをどう使うことができるのか、当事者の皆さんに伝えたいメッセージをお送りします。国籍は国家と個人を結ぶ契約のようなもので、ある一定の条件のもとで国籍が付与されると、国家はその国民に対し一定の義務を負い、国内法上認められる権利を保障しなければなりません。

重国籍の場合、「法の適用に関する通則法」(国際私法)に日本との重国籍を持つ者の法的地位として、日本法が当事者の本国法と規定されています。日本国籍を持つ重国籍者は、日本にとっては日本国民なのです。日本のパスポートで出入国ができ、居住権があるので在留資格は不要です。22 歳以降国籍選択未提出の場合も、現在では日本人として扱われているので、同じ法的地位があります。日本国内(外国公館を除いて)で外国籍を使うことはなく、安易に使ってはいけないと思います。

もう一方の国籍がある国にいるときは、その国の国民であることは自明です。出入国は当該国のパスポートを使うことが要求されます。フィリピンと日本の重国籍者がフィリピン入国で日本のパスポートを使用し、長期滞在したためオーバーステイになっているケースがあります。フィリピン国籍もあるので強制退去されず、国外出国もできないという状態です。こういう場合の対処方法もありますが、できるだけこういう混乱は避けたいものです。

国籍は国家との法的な契約ですが、重国籍者のもう一つの国での外交的保護権には制約があるでしょうが、緊急時ではどうでしょう。カンボジア内戦時にあるカンボジア男性と結婚した日本人女性(カンボジア国籍もあったと思われます)が日本のパスポートを持っていたために日本領事館を経て救出された事実があります。

しかしながら、国籍を二つ持つということは、二つの国の権利と自由を同時に行使することではありません。重国籍の当時者はこれを自分の中で整理しておいてほしいと思います。日本では日本人という法的地位にあり、他の日本人と変わらないということです。もう一方の国籍については日本では潜在的にあるだけでそれを使うことは、大使館、領事館以外ないと思ってほしいです。もちろん、もう一方の国に帰るとその国の人になるわけで、日本人という法的地位に意味のない日常が存在します。

このように自分の法的地位を整理しておくと、日本では他の日本人と決して変わらないことが自明で、平等原則が保持され、重国籍者の特権などはないということがわかります。重国籍者があたかも特別な地位にあるかのような印象をなくしていかなければ、重国籍者への反発や差別が生まれてしまいます。

重国籍者は日本では日本人としての自覚を持ち、一方の国籍は一方の国でのみ使い、二つの国籍を持つ権利を同時に主張しないでほしい。それはたとえ国籍選択制度が撤廃されても同じです。



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